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と後を追ふと、徳次は
「あゝ、さうか。あゝ、さうか」
朝早くから徳次が探し歩いてくれたので、房一には追鮎の素晴しいのが手に入つた。浅瀬につけた追鮎箱の中で、肥つた生きのいゝそいつは青黒い美しい背をたえまなく左右に動かしながら、きれいな水に洗はれて、たとへやうもなく靱しなやかに強く見えた。鼻先に短い針を通して糸につけて放すと、そいつはいきなり激しい力をもつて水の深みに走つて行つた。
「いや、そのうち。――ぜひ御相談があるんですが。――そのうち、一度来ていたゞいて。いや、私の方から出かけませう。や、又――」
半シャツの男が進み出た。
「あゝ、まだ持つてる!」
こんな風に「円い」――のだらうか。いや、それはどうでもよかつた。盛子はそこに房一を感じていた。それは房一の醜い他の部分を忘れさすに足るものだつた。
「なるほどね」
「そんなことができるもんかねえ」
房一は熱心に愛想よく椅子をすゝめた。
「はあ、はあ」
「どうして?血はつゞいていなくてもこゝの家とは親類ぢやありませんか」
「いや、あの晩の、ほんの三二日前です」